- やる気を上げる万能薬はない。ただし、3つの軸に基づいた「8つのタイプ」のいずれに自分が該当するかを知れば、やる気は上げられる
- 3つの軸とは、①マインドセット軸、②フォーカス軸、③自身の軸
- 著者はモチベーションと目標達成分野の第一人者。薄い本だが、得られる学びは大。本書を読めば「自分の特性」が明らかに。「やる気改善」の近道!
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Kindle Unlimited読み放題対象本
『やる気が上がる8つのスイッチ』ってどんな本?
誰もが悩んだ経験がある、どうしてもやる気が出ない問題。
仕事のできる人/できない人、人生の勝ち組/負け組では、明らかに「やる気」に差があります。やる気はすべてのベースとなるスキル。やる気を維持できるようになれば、確実に人生は好転します。
どうしたら、心の火をともし続けて、精力的・継続的に頑張れるのかー
モチベーションと目標達成分野の第一人者で、 コロンビア大学ビジネススクールで教鞭をとる社会心理学者 ハイディ・グラント・ハルバーソンの『やる気が上がる8つのスイッチ』は、この「やる気」を科学する本。
ハイディさん曰く、心に火をつける万能の方法はありません。しかし、それでも、やる気を上げる方法はある!
大事なのは、あなたの行動パターンに合った方法を知り、実践すること。本書では、人を行動パターンで8つのタイプに分類し、それぞれに当てはまる解決策=やる気スイッチの入れ方をわかりやすく伝授してくれます。
薄い本でサクサク読めますが、人生を左右する大事なことが学べます。読む価値が高い1冊です。私は、自分がどんな特性を持つかがわかり、非常に参考になりました。
- すぐにやる気がうせてしまう方
- 人生で成功したい方
誰にも万能のやる気のスイッチはない。大事なのは自分に合った方法
冒頭で述べた通り、ハイディさん曰く、心に火をつける万能の方法はありません。また、モチベーションアップの本でよく語られる、❶いつもポジティブに考える、❷報酬を与える、❸ゴールを設定する、といった方法も「いつでも」「誰にでも」効くものではないと指摘。
そのうえで、人間の考え方の3つの軸を元に、8つのタイプ別解決方法を教えてくれます。
やる気から見た「3つの軸」
まずは、3つの軸の説明から。やる気から見た3つの軸とは以下の3つ。この軸の方向性が異なると、当然、やる気のスイッチも異なってきます。
- マインドセット:「証明」を目指すか、「成長」を目指すか
- フォーカス :得るものにフォーカスするか、失うものにフォーカスするか
- 自信の有無 :自信が大きいか、小さいか
❶マインドセット:思考傾向
マインドセットとは、考え方の癖、あるいは、思考傾向のことです。以下の2つに大別できます。
証明マインドセット | すごい人と思われたい、という思考を持つ人 人の目が気になり、常に他人と比較をしてしまう |
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成長マインドセット | すごい人になりたいと思っている人 他人の目をあまり気にしない 他人が自分を求めてくれなくても、やると思ったらやる |
2つのうち、問題があるのは、「証明マインドセット」を持つ人です。
このマインドセットを持つ人は、常に他人と比較します。また、助けを求めず、ミスを恐れる傾向があります。つまり、自分の能力不足が他人に知られることを嫌います。また、課題や目標にとらわれすぎていて、そこに至るまでの道筋やプロセスを楽しむ余裕もありません。
このタイプは、困難にぶつかったとき、①不安に押しつぶされてしまう、②あきらめてしまう という形となって現れます。これを繰り返すと、自分の無力感に自分自身でお墨付きを与えることとなり、悪循環のループにはまります。
❷フォーカス:やる気のフォーカス
やる気の「動機」には大きく2つあります。
獲得フォーカス | 仕事の「達成」を重視する人 短距離走型。結果が見えやすいことには特にエネルギッシュに情熱的に力を傾ける 長距離走は苦手 ブレーンストーミングは得意ですが、仕事は先延ばしにしがち |
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回避フォーカス | 危機回避、責任全う、責任達成を重視する人 長距離走型。最初から時間を多めに見積もり、期限までに仕事を完了できるように努める 獲得フォーカスの人の抽象的な思いつきにはついていけない |
2つのフォーカスは以下のような特徴となって現れます。(前者が「獲得型」、後者が「回避型」)
- 賞賛を得たいか、リスクを回避したいか
- リスクは挑戦するものか、避けるものか
- 抽象的に考えるか、具体的に考えるか
- スピードか、正確さか
- そこに到達したいか、そこに滞在したいか(見切りが早いか、いつまでも続けるか)
- 多くのことに手を出すか、やりたいことを最後までやるか
大事なことは、「自分の持ち味で勝負する」ことです。2つのフォーカスでは、考え方、言葉遣い、戦略、報酬など、ピンとくるもの異なります。心の琴線の触れ方を意識して、やる気を高めていくことが大事です。自分と相手のフォーカスも意識すると、「それぞれが最高の力を発揮できるようにしていく」と、さらに成果も出やすくなります。
❸自信:目標を達成するためには必須の要素
自信もやる気に直結します。ここで大事なのが、自分が必要とされているという自分への確信「自己肯定感」です。
自己肯定感は4つの要素よって成り立っています。
- 成功体験
- 他者の体験から学ぶ
- 他者からの保証や警告
- その時々の私たちの気分
最も大事なのは「❶成功体験」です。特に、難しいと感じられた目標や課題をやり遂げたという体験であればさらに自己効力感を大きくします。「❷他者の体験から学ぶ」は、特に、困難だったのはどこか、逆にどこは比較的容易だったかを知ることが役立ちます。一方で、❸❹はさほど強力な効果はありません。
ここで、自信をつけるためには「ポジティブ・シンキング」が大事と言われますが、ここには落とし穴があることも理解しておく必要があります。
目標を達成した場面ばかりを想像して、準備を何もせずに待っていても達成はできません。自分にはそれを乗り越える力があると信じて、対応策を検討する人の方が、成功可能性は高まります。
やる気から見た「8つのタイプ」:やる気のスイッチの入れ方(治療法)
3つの軸からやる気から見ると、人は「8つのタイプ」に分けられます。
以下、それぞれのタイプの特徴を見ていきます。
①中二病:証明マインド/獲得フォーカス/自信なし
- 症状
- いつも引っ込みがちで、憂鬱な感じを漂わせている
- 努力をしない。何をするにも面倒くさいと感じている
- 明らかに自分の能力に自信が持てない
- 自分自身を失敗に導いている
- 仕事や勉強の成績を犠牲にしても自分のプライドを守ろうとする)
- 失敗しても、それは自分の無能のせいではないと言える逃げ道を用意している
- たまにやる気を見せることもあるが、すぐにしぼむ
- 治療法
- 成長マインドセットを持つ
- オンザジョブトレーニングで自信をつける
- 獲得フォーカスを十分に活かす環境を作る
②うざいやつ:証明マインド/獲得フォーカス/自信あり
- 症状
- 自慢が多く、いつも注目されていたい
- 批判を聞く耳を持たず、失敗を隠す
- すべてに飛びつく
- 向う見ずである
- 仲間といつも競い合っている
- 治療法
- 成長マインドセットを持つ
- 獲得フォーカスを十分に活かす環境を作る
③臆病者:証明マインド/回避フォーカス/自信なし
- 症状
- 周囲と壁を作り、いつも不安に駆られている
- プレッシャーに押しつぶされそうになっていて、予期せぬ事態に弱い
- 新しい仕事には拒絶反応を示す
- 自分を守ろうとする意識が強い
- ミスを犯すのを何より恐れている
- 治療法
- 成長マインドセットを持つ
- オンザジョブトレーニングで自信をつける
- 回避フォーカスを十分に活かす環境を作る
④退屈な人:証明マインド/回避フォーカス/自信あり
- 症状
- 静かな自信を持ち、いつも注意深い
- 自分の得意なことしかやらない
- 変化には強く抵抗する
- ミスを犯すことをとても気にしている
- 物事のやり方に対しては非常に頑固
- 治療法
- 成長マインドセットを持つ
- 回避フォーカスを十分に活かす環境を作る
⑤やる気の空回り:成長マインド/獲得フォーカス/自信なし
- 症状
- 意欲に満ちている
- 遂行能力は低いが学びたいという情熱がある
- 楽天的で自分には成功する能力があると思っている
- 多くのことを引き受けすぎる
- 認められることによって伸びる
- 困難に建設的に対処しようとする
- 治療法
- オンザジョブトレーニングで自信をつける
- 獲得フォーカスを十分に活かす環境を作る
⑥まじめな見習い:成長マインド/回避フォーカス/自信なし
- 症状
- 自分なりの美学を持ち、やるべきことに集中する
- 今は遂行能力に欠けているが、学んで熟達する覚悟がある
- 守りに強いネガティブ・シンカー
- 学ぶのは得意だが行動に移すのは苦手
- 真摯なフィードバックによって伸びる
- 困難に建設的に対処する
- 治療法
- スキルを身につけ自信をつける
- 回避フォーカスを十分に活かす環境を作る
⑦新星:成長マインド/獲得フォーカス/自信あり
- 症状
- エネルギッシュで楽天的
- 壁にぶつかるほど力が湧き出る
- アイデアの宝庫であり革新的である
- 取るべきリスクを恐れない
- 治療法
- 獲得フォーカスを十分に活かす環境を作る
事を成し遂げる能力もやる気もあります。あとはそれを最大に活用することだけを考えていけばよいのです。まさに新星、スターです
⑧熟練の匠:成長マインドセット/回避フォーカス/自信あり
- 症状
- 責任感が強く信頼できる。いてほしいときにいてくれる
- 常に第二第三の矢を持って事に臨む
- ミスがない
- 揺るがない専門性を持つ
- 自分の周囲もともに高めようとする
- 治療法
- 回避フォーカスを十分に生かす環境を
やる気が高いタイプにシフトチェンジするには
やる気の処方箋は8つのタイプに分けられますが、やる気が上がりにくいタイプだった場合は、自らシフトチェンジしていくことが求められます。3つのステップで、よりよい自分を目指すのがベターです。
第一段階:証明マインドセットから成長マインドセットへのシフト
- 目標を考えるときには「成長」を意識する
まずはいつも自分がこうしたいと思っていることを書き出し、その後、成長を意識させる言葉に言い換る - if-thenプランニングをする
「こうなったらこれをする」とあらかじめ決めておく
これで、成功確率が2倍から3倍も上がることは科学が証明 - 期待値を変えてみる
- 他の人と比べない
- 根気よく続ける
第二段階:「必要なスキル」と「自信」を身につける
- スキルをつける
- 自信をつける
❶は、獲得フォーカスの人には、オンザジョブトレーニング(OJT)が聴きます。様々なことを体験しながら成長でき、スキルと同時に自信もつきます。
❷においては、「成功や失敗の原因」を自分がコントロールできるものにすることが大事です。成功の要因を、努力や計画や粘り強さなど、あなたがあなたの力で変えられるものにするで、自己効力感が挙げられます。
コントロール 可能 | 「準備をしっかりした」「頑張った」「うまくいくように計画を立てた」「あきらめなかった」 |
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コントロール 不可能 | 優秀だったから」「才能があるから」「センスがよかったから」「ラッキーだったから」「あの人がいてくれたから」 |
第三段階:力を発揮する場をつくる
フォーカスに応じて、力を発揮する場を作ります。フォーカスによって、ピンとくる戦略も報酬も環境も違います。最も力を発揮しやすい状況を整えることが大事です。
[獲得フォーカスの人が力を発揮する場を作る]
- よく褒めてポジティブで楽天的な環境を整える
- 目標をはっきりと持たせる
- アイデアを自由に出させる
- 彼らは何でも早く片づけたいと思っていることを忘れない
- 大きな絵を描く
- 決断するときにはプラス面を考えさせる
[回避フォーカスの人が力を発揮する場を作る]
- 建設的な批判と悲観主義でアプローチする
- 何を得るかより何を避けるべきかをはっきりさせる
- 出されたアイデアを分析し、評価をしてもらう
- じっくりと仕事に取り組めるようにする
- 具体的な指示を与える
- 決断をするときにはマイナス面を考えさせる
この最終段階には終わりがありません。常に自分やその人のフォーカスに合った環境を作っていくことがやる気の持続につながります。
最後に
今回は、ハイディ・グラント・ハルバーソンさんの『やる気が上がる8つのスイッチ』の要点を紹介しました。
やる気があるかどうかは、人生の成功を大きく左右するベースとなる力です。個々のスキル・技術習得以上に大事な力なので、是非、自分に合った「やる気」の高め方を知り、自己肯定感を上げていきましょう!