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【書評/要約】珈琲の世界史(旦部幸博)コーヒー香る歴史の旅。カフェで読みたいコーヒー本

【書評/要約】珈琲の世界史(旦部幸博)コーヒー香る歴史の旅。カフェで読みたいコーヒー本
コーヒーの世界史要約・感想
  • アフリカ北東北部のエチオピアから伝えられたコーヒーノキの果実が、いかにして、ヨーロッパ、アメリカ、日本に伝わり、現在のコーヒー文化を花開かせたのかー
  • コーヒー普及の歴史は、覇権争いの歴史。現代でもフェアトレードなど、ブラックな側面を持つ
  • コーヒー近代史を語る上でスターバックスは欠かせない存在。では、なぜ、サードウェーブが登場した?理由がわかると、コーヒーの飲み方も変わる。カフェで読みたいコーヒー本

★★★★☆



目次

『珈琲の世界史』ってどんな本?

仕事の休憩に1杯のコーヒー。気分転換・リラックスを与えてくれるだけでなく、カフェインが脳を覚醒させてくれます。

そんなコーヒーは、水・お茶に次いで、世界第三位の飲み物。1日約25億杯も飲まれており、日本もコーヒー消費大国の1つです。

さて、今回紹介の『珈琲の世界史』は、圧倒的な情報量でコーヒーの歴史が学べる1冊。著者は、コーヒーのおいしさを徹底的に科学的に解説するブルーバックスの名著『コーヒーの科学』の旦部幸博さん。「珈琲の歴史についての本がないなら、書いてしまえ」と、本にするほど調べ上げてしまうところが凄い。前作に続き、愛するコーヒーを探求するオタクっぷりには脱帽です_(._.)_

「食の歴史」は、争奪・覇権の歴史でもあり、コーヒーもブラックな歴史も多い点は知っておきたい。かつては奴隷・植民地、現代でも「フェアトレード」と言う言葉が象徴するように、不当な低賃金労働が問題視されます。犠牲の上に、先進国民が「至福のコーヒー」を味わえている点も学んでおきたい。

コーヒーを愛する人なら、コーヒーの近代史も注目。サードウェーブなどのコーヒーブームの変遷、そして、スタバがコーヒー業界にもたらした影響は読んでおく価値ありです。

コーヒーの歴史にまつわるコラムも面白く、誰かに話したくなるエピソードが満載です。コーヒーを毎日飲む人には是非読んでほしい一冊です。

本書をおすすめしたい方
  • コーヒーの歴史や文化に興味がある方
  • コーヒーが社会に与えてきた影響力に興味がある方。植民地・搾取など、コーヒーのブラックな側面も知りたい方
  • スターバックスの登場が、コーヒー文化にどのような影響を与えたか、知りたい方

コーヒーの歴史(18世紀まで)

コーヒーの歴史(18世紀まで)| 【書評/要約】珈琲の世界史(旦部幸博)

アフリカ北東北部のエチオピアから伝えられたコーヒーノキの果実。それが、どのように、ヨーロッパ、アメリカ、日本に伝わり、現在のコーヒー文化を花開かせたのかー。コーヒー香る歴史旅に出かけましょう。

イエメンから、オスマン帝国を経てヨーロッパへ

十四世紀頃、宗教紛争でエチオピアからイエメンに逃れてきた人たちによって伝えられたコーヒーノキの果実。この果実から生まれたコーヒーは、オスマン帝国の戦争や外交手段(戦利品や外交の手土産)として普及。イスタンブルでコーヒー文化を花開かせます。

さらに、17世紀にはオスマントルコ帝国からヨーロッパへと伝わります。当時のヨーロッパは絶対主義の時代。君主がほぼ全ての政治権力を集中して握り、議会やその他の政治機関の制約を受けずに統治する時代でした。そのため、コーヒーも最初は貴族のものでした。

18世紀、欧米で、コーヒーが政治的に影響を与える

イギリスでは、コーヒーハウスが登場。コーヒーが市民階級に普及し政治談義や商談の場として大きな役割を果たすようになります。また、市民社会の形成を促進しました。

フランスでは上流階級の社交の場としてゴージャスな「カフェ文化」が花開きます。1686年にパリで開業した「カフェ・ド・プロコープ」は、知識人や文学者の集う場所となり、ルソーなどの啓蒙思想家もここで議論を交わします。そして、これが、民主主義や自由の理念の普及に一役買い、フランス革命につながっていきます。

アメリカでは、アメリカ独立戦争のきっかけとなったボストン茶会事件(1773年)が発生。課税と東インド会社の紅茶独占販売に対する不満から、植民地住民がボストン港にお茶を投げ捨てました。この事件以降、アメリカでの紅茶の消費は急減し、代わりにコーヒーが広く飲まれるようになっていきます。

植民地栽培で、コーヒー栽培が世界中に広まる

コーヒーは欧米にとどまらず、世界に影響を与えました。オランダ・フランスが先駆けとなり、植民地でのコーヒ栽培を開始。ヨーロッパのプラントハンターたちによって植民地にコーヒーが移植され、東南アジアや中南米まで、世界中に広まってゆくいきます、

コーヒー貿易は、ヨーロッパ列強においては、「金のなる木」です。ヨーロッパの商人や企業に多大な利益をもたらしました。一方で、森林の伐採や土地の開発が進み、生態系が変化。また、コーヒープランテーションでは、奴隷労働や低賃金労働で労働者の人権問題が深刻化しました。過酷な労働は、奴隷制の廃止後も続き、現代でも問題がなくなったとは言えません。

日本のコーヒー文化

日本では、明治時代にコーヒーが普及します。大正時代には「カフェー」が登場し、多くの文化人・芸術家たちの集いの場となります。関東大震災や戦争の影響で一時的に衰退しますが、戦後の復興とともに再び盛り上がります。

1970年代、1990年代には「喫茶店ブーム」が起こり、日本独自のコーヒー文化が生まれます。「純喫茶」「自家焙煎店」が登場し、コーヒーの技術も大きく向上しました。

コーヒー近代史:3つのコーヒーブーム

戦後のコーヒー史:3つのコーヒー文化 | 【書評/要約】珈琲の世界史(旦部幸博)

ここまでは、大きなコーヒーの世界史を見てきましたが、ここからは、現代人にもなじみがあるコーヒー近代史です。

現代のコーヒー文化と3つのコーヒーウェーブ

現代のコーヒー文化を語る上では、3つのコーヒーブームの存在が欠かせません。3つのブームは、多くのコーヒー愛好者をそれぞれの形で増やしました。

時期特徴代表ブランド
ファースト
ウェーブ
19世紀後半
~20世紀前半
コーヒーが一般家庭で広く消費されるようになり、即席コーヒー缶コーヒーなど、手軽に楽しめる形態で普及ネスカフェ
セカンド
ウェーブ
20世紀中盤
~後半
コーヒーの消費がカフェ文化と結びつき、エスプレッソベースの飲み物(カプチーノ、ラテなど)が広く受けられる
一杯淹て」を定着させた
スターバックス
サード
ウェーブ
21世紀初頭コーヒーを芸術的な飲み物として捉え、品質や持続可能性に重点を置く
品質重視のスペシャルティコーヒーが重視
バリスタの技術やコーヒーの抽出方法に対する関心も高まる
ブルーボトルコーヒー

最も時代が浅いのがサードウェーブ。実は、「サードウェーブコーヒー」は、生まれて 10 年ほどの間に、その代表とされる店やスタイルがころころ移り変わっていて、一貫性がありません。しかし、「スターバックスに対するアンチテーゼ」という点で共通しています。

「サードウェーブ」という言葉が登場した 2003 年は、スターバックスのイメージがどん底まで落ちていた時期と重なります。投資家にとっては、「スターバックスの後釜として成長する企業」という意味で受け止められました。

コーヒー文化を変えた「スターバックス」

コーヒー文化を変えた「スターバックス」 | 【書評/要約】珈琲の世界史(旦部幸博)

昨今のコーヒーの歴史を語る上で、最重要なのが「スターバックス」の存在です。1971年にシアトルで創業。当時は小さな珈琲店でしたが、敏腕経営者ハワード・シュルツの手腕により、セカンドウェーブの先駆者となりました。※この歴史も面白いですが、ここでは割愛。

なぜ、スターバックスが重要かー。それは、これまでとは一線を画したコーヒー体験・コーヒー文化を世界にもたらし、コーヒーの普及に貢献したからです。

それまでのアメリカのコーヒーと言えば「アメリカンコーヒー」。第二次世界大戦後、コーヒーの需給バランスが崩れたことで、節約志向から薄いまずいコーヒーが主流でした。コーヒーメーカーで数杯分を一度に抽出するので、時間が経過したコーヒーは酸化し、味もイマイチでした。このコーヒー文化を、スターバックスは一気に覆したのです。今では、コンビニでも「一杯淹て」が当たり前となりました。

スターバックスがもたらした変化

コーヒー体験を単なる飲食の場から、「より豊かな社交・リラクゼーションの場へと昇華」させたスターバックス。特に以下の点で、大きな役割を果たしました。

サードプレイスの創出家庭や職場に次ぐ「サードプレイス」としてのカフェを提供。居心地の良いインテリア、無料Wi-Fi、ゆったりとした座席などがその一例。
品質と多様性高品質なコーヒー豆の使用や、スプレッソメニューを中心にコーヒーの選択肢を広げた
グローバル展開世界各地に店舗を展開し、コーヒーを飲む習慣を創出。多くの国でコーヒー消費が増加した

スタバを批判するコーヒー関係者もいますが、近代のコーヒー史において、スタバの果たした役割は極めて大きい。さらに、その後、サードウェブが登場するきっかけをつくり、小さ店舗のバリスタたちが、自分の技術を競い、美味しいコーヒーにしのぎを削るに至りました。

コーヒーの将来

スターバックスの世界進出により、コーヒー消費は、世界中に広まりました。一方、コーヒー消費量の拡大は、問題も生み出します。コーヒー豆争奪、プランテーションによる自然・環境破壊、価格変動による経済への影響などの問題が、これまで以上に大きくなってしまう可能性もあります。

しかし、それでも、人々はコーヒーを求めます。消費者としては、美味しいコーヒーが低価格で手に入る技術が出て、消費者を喜ばせてくれることを、期待したいところです。今後も、コーヒーから目が離せません。

ちなみに私が最も好きなコーヒー豆はスタバのカフェベロナ。毎日、デロンギのエスプレッソマシンで、カフェラテを作ったり、ホット・アイスコーヒーを入れて楽しんでいます。これがない人生は考えられない!

最後に

今回は、旦部幸博さんの『珈琲の世界史』からの学びを紹介しました。

ここで紹介したコーヒーの歴史はごくごく一部。紅茶で有名なリプトン卿、実はコーヒーの普及に大きく関わっているナポレオン、さらに、スタバ、ブルーボトルコーヒーなど、最後まで楽しめるはずです。

コーヒーの雑学は、よりコーヒータイムを楽しくさせること間違いなし!是非手にとってみてほしいです。

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