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【書評/要約】胸はしる更級日記 (小迎裕美子、菅原孝標女 ) 元祖『源氏物語』ヲタ女子の回想日記。マンガでわかって超面白い

【書評/要約】胸はしる更級日記 (小迎裕美子、菅原孝標女 ) 元祖『源氏物語』ヲタ女子の回想日記。マンガでわかって超面白い
胸はしる更級日記 」要約・感想
  • 胸はしる更級日記』は、平安時代を生きた菅原孝標女(すがわらのたかすえのむすめ)が綴った『更級日記』をコミカライズした作品。マンガでわかって超面白い
  • 菅原孝標女元祖『源氏物語』ヲタ女子。少女時代は光源氏に憧れる夢見る夢子ちゃん。2024年大河ドラマにも登場(予定)
  • 更級日記』は50代になって書かれた回想録。源氏物語 推し活さまっしぐらのキラキラ10代から、後悔と懺悔を繰り返す晩年までが綴られる

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目次

『胸はしる更級日記』ってどんな本?

NO物語、NOライフ!な『菅原孝標女』に共感💕
著:小迎 裕美子, 著:菅原孝標女, 読み手:赤間 恵都子

2024年10月2日発売!

胸はしる更級日記』は、平安時代を生きた菅原孝標女(すがわらのたかすえのむすめ)が綴った『更級日記』をコミカライズした作品。マンガ・イラストで面白く「平安の推し活女子」の生涯が学べる作品です。

著者である小迎裕美子さんはイラストレーター。今回紹介の『胸はしる 更級日記』は平成女子弟三弾。

第一弾:『新編 本日もいとをかし!! 枕草子』(清少納言) 
第二弾:『新編 人生はあはれなり… 紫式部日記』(紫式部)

第一・二弾の作品に私はド・はまり。どちらも2023年1月27日発売された作品。これを読んで、清少納言(ナゴン)、も紫式部(シキブ)も「めっちゃ面白いじゃん」とファンに!そして、2024年からは大河ドラマ『光る君へ』が始まって、こちらにもド・はまりしてしまいました。

といわけで、2024年は、自分でも驚くほど、平安時代の小説・解説本など読み漁っています。

さて、『更級日記』は、50代になった菅原孝標女(すがわらのたかすえのむすめ)が13歳から50代になった晩年までの人生を綴った回想録。『光源氏』推し活まっしぐらのキラキラ10代から、後悔と懺悔を繰り返す晩年までが綴られます。

10代は、現代で言えば、人気コミックにド・はまりしたヲタ女子。『源氏物語』にハマり、光源氏や高貴な貴族の生活に憧れ、もうとにかく、全巻読みたくてしょうがない。

しかし、徐々に年齢を重ね、婚期遅れるし、生活に困るし… で「夢見る夢子ちゃん」ではいられなくなる… 人生を摸索する姿は、共感せずにはいられないはずです。

胸はしる更級日記』は、菅原孝標女の40年の記録を、ユーモアたっぷりで描きます。女子はもちろん、男子だって面白く読める!『光る君へ』ファン、そして、『源氏物語』ファンも推したい1冊です。

私も、菅原孝標女『NO物語、NOライフ!』な生き方に、すっかりファンになりました。

こんな方におすすめ
  • 平安時代の文学に触れてみたい方
  • 『推し活』に共感できる方
  • キラキライケイケの10代の楽しかった日々を時々思い出してしまう方
  • 『光る君へ』ファン、そして、『源氏物語』ファン

菅原孝標女って誰?

菅原孝標女(すがわらのたかすえのむすめ)は、正確な名前はわかりません。便宜的に父親の名前に親族関係性をつけて呼ばれています。。平安時代の女性は、よほど高貴な女性でなければ正式な名前がわかっていません。清少納言も紫式部も本名ではなく女房名です。

同じような呼び方で呼ばれる平安女子に「藤原道綱母(ふじわらのみちつなのはは)」がいますが、彼女は『蜻蛉日記』の作者。浮気性な夫・藤原兼家(ふじわらかねいえ)との夫婦生活の不満を愚痴った日記です。ちなみに、『光る君へ』では、藤原道綱母を財前直見さんが、藤原道綱を上地雄輔さんが演じています。

実は、藤原道綱母と菅原孝標女は「叔母と姪。さらに、この家系は、学問の神様として名高い「菅原道真」の末裔で孝標女は菅原道真の5世孫!家系で学問・文才に秀でていたんですね。

『光る君へ』では、菅原孝標娘/ちぐさ吉柳咲良(きりゅうさくら)さんが演じます。登場が楽しみです。

『更級日記』:現代女子にも大共感な回想録

【更級日記:序盤】『源氏物語』が好きすぎて…

胸はしる 更級日記』で、小迎裕美子さんは、菅原孝標女を敬意と愛情をこめて「ムスメ」と読んでいます😝

10代のムスメは、『源氏物語推しの熱量凄すぎのヲタク女子』元祖・文系オタ女子です。

『源氏物語』を全巻読むために、等身大の仏像まで彫らせて、毎日一心不乱にお祈りをするほど。さらには、やっとの思いで全巻を手に入れた「ひたすら読み続けているときの心地は、お后(おきさき)になるよりも、断然幸せ!」と書き記すほどです。

ムスメは、『源氏物語』の登場人物の中でも「浮舟」好き。男性に翻弄される悲劇のヒロイン好きなんでしょうか😆ムスメは、10代の妄想を回想しながら「我ながら、恥ずかしい」と言っている点も回想録ならではの面白さです。

実は、ムスメは、10代前半は父の赴任先である千葉県に住んでいました。京都から離れた千葉では、噂に聞く『源氏物語』を読んでみたくても読むことができません。父の任期終了で、その夢が叶うかも!と心を躍らせながら京都へ向かう3カ月の旅が、『更級日記』には描かれます。

普通、平安時代の女性は、ビックツアーには出かけることなどありません。3か月にも及ぶ旅は極めて貴重な経験です。ムスメは目にした情景、出会った人々を生き生きと描いています。

【更級日記:中盤】変わる環境、降りかかる現実

京に戻り、無時に京都へたどり着いたムスメは、継母の手を借り、親戚の女性から『源氏物語』を手に入れて、寺参りにも行かず読みふけり、「源氏物語の世界」を妄想します。

しかし、現実は…

親しかった継母との別れ、愛する乳母や姉の死、家の火事など、厳しい現実が襲い掛かります。さらに、源氏物語のような、きらびやかな宮中世界で生きるためには、父の出世が必須でしたが引退、母も出家し、夢を追う暮らしはできません。むしろ、老いた親と亡き姉の子の面倒も見なければなりません。

しかも、29歳にして独身… このころの女性の平均寿命は40歳ですから、これから結婚するにしても超晩婚です。

宮中仕えもしますが、父に反対され辞めさせられ、結婚。源氏物語の世界とは程遠い、厳しい現実に打ちのめされます。

現実を生きざるを得ない女性の心の揺れは、現代を生きる女性と何もかわりません。共感必至です。

【更級日記:終盤】夢見る頃を過ぎて…

『更級日記』序盤~中盤まで、憧れを持ち続けたムスメ。しかし、人生終盤、憧れていた理想はほとんど叶えられず、平凡に過ごしている自分の半生を後悔し始めます。

そして、若いころは『源氏物語』に傾倒しすぎて疎かにしていた自分を反省。お寺参りなどに行き、これまでの人生を悔やみ始めます。

さらには、愛する夫も… 先立たれてもぬけの殻のようになります。

一人になってしまったムスメ(といっても50代)は、絶望に打ちひしがれながらも「筆」をとります。そして、自分の人生を振り返る回想録『更級日記』を記すのです。

最後に:『更級日記』の感想

「夢見たことが何一つ叶わない人生だった」と、綴られた更科日記

しかし、本当にそうだったのかな…. ムスメさん。

後悔も多いかもしれないけど、男が通ってくるのを「ただ待つだけの人生」ではなかったのは確か。『源氏物語』の夢中になり、3か月にもわたるビック旅行を経験し、そして、田舎と京の両方の暮らしを体験し、しかも、人生の最後には、1000年読み継がれる日記を残す。

決して、平凡でも、つまらない人生でもない、十分スゴすぎる人生

全く理想の通りにならなかった人生は、1000年後の現代人の心をも揺り動かしています。そして、これからもー

是非、多くの人に読んでほしい1冊。面白く読めるので是非!

著:小迎 裕美子, 著:菅原孝標女, 読み手:赤間 恵都子

清少納言・紫式部・菅原孝標女 の順で読みすることで、平安時代を生きた女性たちの生きざまを知ることができます。ホント、この時代の女性たち、自由で面白いです!

著:小迎 裕美子, 著:清少納言, 読み手:赤間 恵都子
著:小迎 裕美子, 著:紫式部, 監修:赤間 恵都子

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