- 『成瀬は信じた道をいく』は 2024年本屋大賞 大賞受賞作
- 主人公・成瀬あかりの圧倒的な存在感!ページを読む手が止まらない。読むと読者は元気をもらえる!
- 著者は宮島未奈さん。登場人物・舞台を魅力的に描く筆力が凄い!
★★★★★
Audible聴き放題対象本
小説『成瀬は天下を取りにいく』『成瀬は信じた道をいく』ってどんな本?
滋賀県大津市に住む中学2年生の成瀬あかりは、かなり変わった女の子。
- 西武大津店閉店まで毎日通い、テレビ番組の中継に映る
- M-1グランプリに出場
- 実験のため坊主頭になる 等
突拍子もない行動で周囲を驚かせます。特に近くにいる友達はいつも振り回されっぱなしです。ストーリーは成瀬に関わる人々の視点を通じて展開。学校の友達、近所の人、ひょんなことから成瀬と知り合った人など、それぞれの視点から成瀬とのエピソードを通じて「成瀬の個性と魅力」がテンポよく軽やかに描かれます。
読者は確実に、ストーリーに引き込まれる!主人公・成瀬の圧倒的な存在感と個性、そして、著者・宮島未奈さんの筆力(人物描写力・構成力 他)も凄い。 多くの人がファンになってしまう、「読者の心が自然にくすぐられてしまう仕掛け」も巧みで、2024年 本屋大賞の大賞受賞にも納得の1冊です。
成瀬シリーズは2冊からなり、成瀬が成長・天下を制していく姿が描かれます。
- 成瀬は天下を取りにいく:中学2の夏休みから高校に合格するまで
- 成瀬は信じた道をいく :高校から京都大学に入学するまで
本作品は、小説のあらすじ・ネタバレを読むより、とにかく、作品を手に取って読むのがいい!
そこで、本記事では、あらすじ・ネタバレよりも、売れている理由について、私の考察を中心に紹介します。
小説『成瀬は天下を取りにいく』『成瀬は信じた道をいく』:あらすじ
『成瀬は天下を取りにいく』あらすじ
2020年、中2の夏休みの始まりに、幼馴染の成瀬がまた変なことを言い出した。
コロナ禍に閉店を控える西武大津店に毎日通い、中継に映るというのだが……。
M-1に挑戦したかと思えば、自身の髪で長期実験に取り組み、市民憲章は暗記して全うする。
今日も全力で我が道を突き進む成瀬あかりから、きっと誰もが目を離せない。
発売前から超話題沸騰! 圧巻のデビュー作。
上図の画像あるように「かつてなく最高の主人公、現る!」この言葉は本当です。同作は、第20回「女による女のためのR-18文学賞」大賞、読者賞、友近賞をトリプル受賞した短編小説「ありがとう西武大津店」を含む宮島未奈のデビュー作だ。
成瀬あかりはいつも唐突におかしな挑戦を始める変わった子。最初は「何、この子?」と間違いなく思われるのに、成瀬の人となりが見えてくると、評価が変わってくる。
一体、成瀬のバイタリティはどこからくるのだろうかー。面白がって観察しているうちに、いつの間にか成瀬が身近に感じ、そして、希望と勇気がもたらされ、ファンにならずにいられなくなる。そんな爆裂娘なのです。
同作は、第20回「女による女のためのR-18文学賞」大賞、読者賞、友近賞をトリプル受賞した短編小説「ありがとう西武大津店」を含む宮島未奈さんのデビュー作。デビュー作にして最高に面白いです!
※後述の感想でも、あらすじ・ネタバレ紹介します。
『成瀬は信じた道をいく』あらすじ
成瀬の人生は、今日も誰かと交差する。
「ゼゼカラ」ファンの小学生、娘の受験を見守る父、近所のクレーマー(をやめたい)主婦、観光大使になるべくしてなった女子大生……。
個性豊かな面々が新たに成瀬あかり史に名を刻む中、幼馴染の島崎が故郷へ帰ると、成瀬が書置きを残して失踪しており……!?
面白さ、ますますパワーアップの全5篇!
2作目では、高校から京都大学に入学するまでの成瀬あかりが描かれます。
成長したことで、行動範囲が広がります。成瀬は行動力があるので、目標・目的ができるや否や、行動を起こします。それは滋賀県内にとどまりません!
小説『成瀬は天下を取りにいく』『成瀬は信じた道をいく』:感想(登場人物編)
「成瀬は天下を取りにいく」も「成瀬は信じた道をいく」ともに、とにかく面白い。「ページを読む手が止まらない」という言葉がピッタリ当てはまる青春小説です。
なぜ、成瀬シリーズはこれほどまでに面白いのか? その魅力を私なりに考察してみます。
主人公・成瀬あかりの圧倒的存在感
本小説の最大の魅力は、「主人公・成瀬あかりのキャラ設定」です。
- 成瀬は、とにかくマイペース。周囲の目を気にしない。
- 成瀬は、自由。「人生は短い、後悔したくない」と考え、やりたいと思ったらやる!
- 成瀬は、規格外の行動力を持つ。周囲も巻き込む。動いて確かめる
- 成瀬は、型破りなスケールの大きいことを言う。日頃から口に出して種をまいておくのが大事と考える
- 成瀬は、信念を持つ。この強さが人を魅了する
- 成瀬は、天才少女。頭の良さを鼻にかけることはまるでない
- 成瀬は、ユーモアがある。真顔で面白いことをいう
- 成瀬は、地元(滋賀県大津市)が好き。地元愛が凄い
- 成瀬は、誰に対しても分け隔てなく、誠実に付き合う。思いやりがあり、正義感もある。
- 成瀬は、完璧なスーパーウーマンではない。失敗もする。しかし、前向きに頑張る
成瀬は超個性的です。型破りな行動で周囲を巻き込みながら突き進みます。
あまりに型破りなので、成瀬は初対面では印象がよくありません。「変な人」「関わりになりたくない人」です。しかし、成瀬と行動するうち、成瀬の考え・行動・誠実さ・思いやり・パッション・強さに触れ、どんどん成瀬に惹きこまれていきます。
現代人、人の目を気にして、自分のやりたいことができずに生きている人で溢れています。そんな人たちから見て、独創的なスタイルで即行動・実践していく成瀬が魅力的に映らないはずがありません。
「天下を取る」「二百歳まで生きる」と言った、前向きで、常識にとらわれない成瀬の発言・行動に、読者は「型にはまることなく、自分に素直に生きることの大切さ」を教えられます。読めば、成瀬ファンになるはずです。
脇を固める登場人物も魅力的。挫折・苦悩などにも共感
成瀬の脇を固める登場人物もいろんな人で溢れています。彼ら一人一人が魅力的です。そして、成瀬の影響を受けてみんな明るく楽しそうです。
中には、圧倒的な成瀬の存在を前に、はじめは、劣等感や挫折感を感じる登場人物います。しかし、登場人物たちは、次第に、成瀬の姿に「前を向くヒント」を感じ、明るくなっていくのです。
実社会でも元気な人・前向きな人といると自分も明るくなります。行動力のある人といると、たくさんの経験もできます。成瀬は、ものおじせず、いろんな人とのコミュニケーションを広げていきます。そして、新たな可能性を広げていきます。
人間関係はとかく煩わしいものですが、「人とつながるのっていいな」「人とつながることで可能性・幸せも増えていくのだな」と、読みながら改めて実感させられました。
小説『成瀬は天下を取りにいく』『成瀬は信じた道をいく』:感想(著者編)
成瀬シリーズを読んでいると、驚かされるのが著者・宮島未奈さんの筆力の高さです。読者の心を虜にする様々な仕掛けに驚かされます。
著者・宮島未奈さんの筆力(表現力・構成力 など)が凄い
著者の宮島未奈さんは、成瀬の魅力を圧倒的な筆力で描き出します。
舞台・キャラ設定、構成力、キャラクター描写力、感情表現力 … 等がなくして「成瀬の魅力」は伝わりません。しかも、それを”サラリと軽やか”に表現します。凄さを感じさせずに、「実は凄い」ところがポイントです。
著者・宮島未奈さんはマーケターとしても凄い
宮島未奈さんの文章で「絶妙にうまい!」と思うのが、「固有名詞(具体的な場所、商品名など)」使い方です。固有名詞を使うことで、ストーリーにリアル感が感じられ、また、その対象物に、自然と愛着がわきます。
例えば、舞台となるのは成瀬の地元「大津・膳所」ですが、この地がとても魅力的に描かれる!M1グランプリ登場のためにつくった漫才コンビの名前も地元への愛が溢れるコンビ名「ゼゼカラ」。そのキャッチコピーは「膳所から世界へ」です。
ちなみに宮島未奈さんは、静岡県富士市生まれ。滋賀県大津市在住。
初対面の相手と同郷だと分かるとすぐに親しくなれますが、小説でも同じ。ジモティなら本小説とても身近な愛着のある存在となり、すっかり読者になってしまいます。膳所民、大津民、滋賀県民が「成瀬ファン、小説ファン、宮島未奈さんファン」にならないはずがありません。
本作にはいろんな具体的なスポットが登場しますが、人気作家の描いた舞台は「聖地」として観光スポットになることがありますが、まさに、「成瀬は天下を取りにいく」「成瀬は信じた道をいく」の舞台は聖地巡礼スポットとして注目を浴びています。
地元への経済効果でも貢献!宮島未奈さんのマーケターとしての凄さを感じずにはいられません。
最後に
今回は、宮島未奈さんの小説『成瀬は天下を取りにいく』『成瀬は信じた道をいく』 のあらすじ(一部ネタバレ)と売れている理由を私なりに考察して紹介しました。
『成瀬シリーズ』で描かれているのは、成瀬の大学合格まで。今後の成瀬の活躍も期待したいし、ドラマ化・映画化も期待したい!
自分らしく生きることの大切さを教えられるとてもよい作品です。是非、本書から元気を頂いてください。