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【書評/あらすじ】有罪、とAIは告げた (中山七里) 裁判判決をAIにゆだねていいのかー。そう遠くない未来にあり得る、司法の倫理を問う法廷ミステリー

【書評/あらすじ】有罪、とAIは告げた (中山七里) 裁判判決をAIにゆだねていいのかー。そう遠くない未来にあり得る、司法の倫理を問う法廷ミステリー
有罪、とAIは告げたあらすじ・感想
  • 人気ミステリー作家・中山七里さんの『有罪、とAIは告げた』は、AIを裁判に導入するという未来の可能性を描きつつ、実利用におけるAIの利点/リスクを「陰謀」と絡めて描く法廷ミステリー
  • 過去データに基づく判定の限界司法の倫理、AIの公平性や中立性への疑問 に深く切り込む作品
  • 本作は、司法に限らず、他のビジネスでも起こり得る「事業へのAIの導入時のの課題・問題」を提示する。リアル社会でのAI経営の失敗例など、学びもあり

★★★☆☆ Audible聴き放題対象本

目次

『有罪、とAIは告げた』ってどんな本?

Audible読み放題対象最初の2か月99円(2/4まで) ※いつでも解約可能

人気ミステリー作家、中山七里(なかやましちり)さん。私の好きなミステリー作家の一人です。

今回紹介の『有罪、とAIは告げた』はタイトルからもわかる通り、法廷ミステリー。中山七里作品には、法廷を舞台にした法廷ミステリーが複数ありますが、本作では、AIを裁判に導入するという未来の可能性を描きつつ、実利用における「AIの利点」と「リスク」をテーマにしています。

過去データに基づく判定の限界司法の倫理、AIの公平性や中立性への疑問 に深く切り込む作品です。

一昔前は、AI小説といえば、『ターミネーター』に見られるような、「人類 VS AI」作品でしたが、昨今は、AIやロボットが当たり前に身近にある世界で、それを利用することによる弊害を描く作品が主流。本作も後者側の作品です。

遠くない未来にあり得る問題を、エンタテイメントとして楽しみながら、(司法に限らず)「AIの導入と依存」を考えさせられる作品です。

有罪、とAIは告げた:あらすじ

【書評/あらすじ】有罪、とAIは告げた (中山七里)

本の紹介文が詳細なので、そのまま掲載します。
※一部、改行をを入れ、ポイントとなる部分、「太線」にしました。

東京地方裁判所の新人裁判官・高遠寺円は、日々の業務に忙殺されていた。公判、証人尋問、証拠や鑑定書の読み込み、判例等の抽出、判決文作成と徹夜が続く。


東京高裁総括判事の寺脇に呼び出された円は、ある任務を命じられる。中国から提供された「AI裁判官」を検証するというものだ。〈法神2〉と名付けられたその筐体に過去の裁判記録を入力する。果たして、〈法神〉が一瞬で作成した判決文は、裁判官が苦労して書き上げたものと遜色なく、判決もまた、全く同じものだった。業務の目覚ましい効率化は、全国の裁判官の福音となった。しかし円は〈法神〉の導入に懐疑的だった。周囲が絶賛すればするほどAI裁判官に対する警戒心が増す。

そんなある日、円は18歳少年が父親を刺殺した事件を担当することになる。年齢、犯行様態から判断の難しい裁判が予想された。裁判長の檜葉は、公判前に〈法神〉にシミュレートさせるという。データを入力し、出力された判決は――「死刑」。ついに、その審理が始まる。


罪は、数値化できるのか。裁判官の英知と経験はデータ化できるのか。連載、即緊急出版!

目前に迫るあり得る未来に、人間としての倫理と本質を問う法廷ミステリー

本作を楽しむポイントを追加すると、以下のような点でしょうか。

  • AI裁判官〈法神2〉は中国で開発。中国では既に一般運用され、成果を上げているシステムが、お試し利用として日本に提供された
  • 〈法神2〉のアルゴリズムはブラックボックス
  • AIに過去データを与えることで、一瞬で判決文を作成
  • 倫理観が問われる場である司法。当然、最初は誰もが懐疑的
  • しかし、人手では何日もかかる作業が一瞬で完了され、しかも、テストすると全く実利用にそん色ない判決文となると、AI支持者は増えていく
  • 人間 VS AI の判断力
    人:疲労やストレス・感情の変化でいつも同じ判断を下すとは言い切れない
    AI: 24時間同じ高精度さを持って判断
  • 仮に「AIは人間のサブ」として導入しても、人間はそれを維持できるのか?
    主従の逆転が起こらないと言えるのか?なし崩し的に依存することにならない?
  • 人間 VS AI。とっちが公平?
  • 多くの事件判決にAIは使えそうでも、それは万能?

そもそも、リアルの世界では、同じ裁判でも、裁判官によって判決が異なることはあり得ます。「人間裁判官」と「AI裁判官」なかなか悩ましい問題です。

ただし、本作では、AI裁判官にミステリー要素を加え、日本の司法は「AI裁判官」を導入しないことにします。実際のストーリーは小説で楽しんでください。

AIの限界

【書評/あらすじ】有罪、とAIは告げた (中山七里)  | AIの限界

AI・ロボットに関する小説は複数読んでいますが、そこから教わるのは、どのような現場で用いるにしても、「AIは万能ではない」ということ。必ず限界があり、また、利用する人間が使い方を間違えると、そこには悲劇が待っています。

例えば、平野啓一郎さんの『本心』も、テクノロジーが進化した社会の”功罪”を鋭く描く作品です。いろんなことを考えさせられます。

有罪、とAIは告げた』では、「AI利用の失敗の実例」として、米国の不動産テック大手Zillow(ジロー)の失敗がストーリーの中で。Zillowは独自のAI技術を駆使して住宅を迅速に買取、顧客に提供していましたが、AIに経営を依存させ過ぎたことで結果的に大規模な損失を計上。2021年第3四半期に 5億ドル巨額の損失を計上し、iBuying事業を終了しすることになりました。それに伴い、社員の25%に当たる2,000人以上の従業員を解雇、株価も急落し、投資家からの信頼も失いました。

なぜ、AI経営で失敗したかー

理由は、2020年から始まった新型コロナウイルス感染。AIアルゴリズムが予測に使用していたデータは、過去のトレンドに基づいており、パンデミック後の異常な市場環境や地域ごとの違いを正確に反映できなかったからです。

少なくとも現時点では、AIは複雑な市場を予測できるほど、万能ではありません。データや過去のトレンドに基づくモデルは、突発的な市場の変動には脆弱です。

今後は、自ら学習するAIも益々高度化するでしょうか、司法の現場では、世の中の変化に追随するだけでなく、感情・倫理の理解も必要なります。「AI裁判官」を人間が受け入れられるか問題もあります。

近未来小説は、このような近未来を考えるきっかけを与えてくれます。いろいろな学びもあると思いますよ。

最後に

今回は、中山七里さんの『有罪、とAIは告げた』のあらすじ学びを紹介しました。

中山七里さんの作品には、法廷ミステリーが複数あり、それぞれ、社会・犯罪、そして、人間の闇について考えさせられます。

最も代表的的な法廷ミステリーは御子柴礼司シリーズ。主人公・御子柴礼司のキャラが際立つミステリー。大どんでん返しで読者を楽しませてくれます。

それぞれ、異なる事件で、弁護士の倫理観、社会的弱者と法律、社会的弱者の犯罪、正義と贖罪 など、「社会の闇」に迫っており、多くを考えさせてくれます。

これ以外にも、検事側から犯罪を裁く「能面検事シリーズ」も面白いです。

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