- 本作は、「仕事」「教育」「自然災害」「暮らし」「健康」を切り口に、未来を予測する
- 未来はこれから創るものー
特に日本人は、未来を悲観的に予測しがち。本作では、【明るい未来】と【暗い未来】の両方から未来を予測する。予測の多くは外れるが、未来がどうなるか方向感を持っていた方が、時代の変化に対処できることは間違いない。 - 時代の流れは不可逆。現在に固執していては、時代に取り残され、未来に必要とされない人になる。自分が認識している情報が古くないか、また、現在の先にどんな未来があると考えられるのか、整理して学びたい方におすすめの1冊
★★★★☆
Kindle Unlimited読み放題対象本
『池上彰の未来予測 After 2040』ってどんな本?
2024年から想像する2040年。あなたは16年の自分を想像できますか?
10年前、世界中が外出禁止になる新型コロナパンデミックが起こるなんて想像もできなかった、ビットコインが1600万円まで上昇するとは思わなかったし、トランプ大統領が2回も大統領になるとも思わなかった。 未来予測の難しさを思い知らされます。
しかし、「ベーシックインカム」の導入に前向きな国はまだない。はハズレるから不要というものではありません。たとえ、はずれようが、未来予測するからこそ、変化に敏感に対処できます。
『池上彰の未来予測 After 2040』は、池上彰さんが、「仕事」「教育」「自然災害」「暮らし」「健康」を切り口に未来を予測する1冊です。
今、多くの日本人は将来に暗い未来を描きがちです。そこで、池上さんが本作で意識されたのが、【明るい未来】と【暗い未来】の両方を想像すること。未来を明るいものにしたければ、、現実を直視しつつも、明るい未来想像も必要です。「未来はこれから創るもの」なのですから。
各項目に目新しい内容があるとは言い切れませんが、現状説明とその先にある未来の説明がわかりやすい。全体を通じて、押さえておくべき点がしっかりまとまっている感じです。私個人としては、古くなった情報のアップデートにも役立ちました。70歳を超えて、今なお、人の上を行く「世界を広く見る目」には感服させられます。
自分が認識している情報が古くないか、また、現在の先にどんな未来があると考えられるのか、整理して学びたい方に、おすすめです。
本記事では、各項目で印象に残った点を、備忘録的に記します。
なぜ、未来予測が大事なのか
なぜ、未来予測が大事なのか。当たり前に大事ですが、言葉として記しておきます。
- 時代の流れは不可逆。現在に固執していては、時代に取り残され、未来に必要とされない人になる
- 未来予測の意味は、外れることも多い。しかし、事前に予測しておくことで、変化に対する心構えや準備ができる
- 取り残されずにスムーズに順応できる人/できない人の違いは、好奇心があるかどうか
- 時代と上手に付き合うためにも、多様な人間関係を構築し、社会との接点を維持し続けることが大事
では、未来予測の難しさとはどこにあるのでしょうか?とりわけ難しいのは、突然「フェーズ(局面)が変わる」局面があることです。今の「延長線上」にない未来がありえることを理解しておく必要があります。
以下では、「仕事」「教育」「自然災害」「暮らし」「健康」の各分野で、改めて大事と認識したことをまとめておきます。
仕事編:未来でも必要とされる人とは
- 今後仕事の8割はAIに代わる
- 生成AIをうまく使いこなすような人は確実に生き残る。米国では、生成AIに対して優れた指示(プロンプト)を出し高品質な答えを引き出す「プロンプトエンジニア」という仕事が、需要も年俸も高い
- しかし、「プロンプトエンジニア」という仕事も2024年に需要があるかは不明。今後増えていくのは、企業ごとの専門知識や個性を身につけた「最適な」生成AIを作っていく「AIトレーナー」
- 新しくかつ需要のある仕事を生み出すのは、「困っている誰かのために」などと仕事の目的や意義を常に考えられる人でないと不可能。AIにはない「人間力」が重要
- 日本は、「ものづくり幻想」から脱却できないうちは 世界時価総額ランキングに入ることはない。2040年には「世界時価総額ランキングトップ 50」は入れないだろう
- 日本のアニメやマンガも中国の下請けに。既にソフト面でも日本は厳しい。今は、中国のアニメーターの方が月給が上。アニメーターの賃金が上がらない限り、優秀な人材が入ってこない。しかも、中国は母数となる人数が多い。中国発のオリジナルアニメが大人気で、内容のクオリティも高いと評価されている。日本のマンガやアニメなどのカルチャーが世界で大人気と言われたが、これも、過去の成功体験になりつつある
う~ん。はやり、世界と日本の賃金の伸びを鑑みる限り、日本の行き先は暗く見えます。優れた人材は流出。東南アジアの出稼ぎ労働だって、この円安で日本を魅力的に思わなくなっていますからね。
教育編:未来を生きるわが子に必要なこと
- 通信制高校に通う生徒が急増! オンライン教育は当たり前に ※N高(沖縄県)、S高(茨城県)など
- 高校まで義務教育化し無償にしないと 教育分野の未来は暗い
- 教員不足が大きな問題。教員不足で自治体ごとに 「教育格差」が生まれる
- 小学生の読書量減少。学力に影響
少子化で生徒が少ないことも問題ですが、教員不足や質の低下も大問題。教育の質が落ちれば、将来のビジネスマンの質も落ち、国力の低下にもつながります。これは由々しき問題です。
自然災害編:災害大国日本で生き残るために
- 世界では「水を巡る紛争」が由々しい。日本も他人事ではない
- 地球温暖化対策で、電気自動車を推進してガソリンエンジンが不要になると、 日本全体で 80 万人の雇用が喪失
- 世界中で最も人間を殺している生き物は蚊。温暖化で蚊からの感染症「マラリア」「デング熱」「日本脳炎」などが流行するリスクがある
- 世界で起きているマグニチュード6以上の地震の約2割が日本で発生
暮らし編:経済・少子高齢化は改善されるのか
- 日本だけがいつまでも賃金がまったく上がらず取り残されているという異常な状況。賃金が上がらなければ、購買力も伸び悩む
- 賃金が上がらない理由の一つは、企業の内部留保。「もしものことがあったら心配だから」という極めて日本的な理由
- 日本のGDPは、2023年、4位に転落。2025年にはインドにも抜かれる
- 「GDPは高ければいい」という価値観から抜け出す必要あり。GDPは豊かさの指標ではなくなる(モノを持たない、シェアがさらに拡大。コト消費でもGDPはあまり伸びない)。GDPという概念の抜本的な見直しも進むと考えられる
- 物価上昇抑制に金利上昇が必要だが、金利を上がると国債が返済できなくなるジレンマ。今のところ、日本は個人保有の金融資産(預金・株式・保険など)が国の借金を上回っているので良いが…日本政府が、国債をせっせと外国に買ってもらっている点には注意が必要
- 日本の財政がこれほど赤字なのは、 日本が「中福祉・低負担」の国 だから。米国は「低福祉・低負担」。実は国民が、払っている税金に見合わないくらいの福祉サービスを享受している(将来に先送り中)
- 2023年度予算 社会保障給付費:134.3兆円
- 内訳:年金:60.1兆円(約5割)、医療:41.6兆円(約3割)、残りが介護や子ども・子育て関係
- 財源:保険料:77.55兆円(約6割)、残りは国と地方の公費
- 社会保障に対する国庫負担:36.9兆円(国の一般歳出の 50.7%)
- 「ベーシックインカム」の導入に前向きな国はまだない。ベーシックインカムが導入されれば、社会保障を廃止となる。年金も健康保険も生活保護もなくなる
- フランスに学べば、婚外子など多様な家族の形を認めれば、 出生率は上がる。従来からの「家制度」を見直し、「結婚」という形を取らずとも夫婦として認める(税の優遇や各種手当も受けられる)ようにすれば、パートナーとの間に子供を産む人は増えると考えられる
- 年金は「保険(年金保険)」。元を取るという考えはそろそろやめるべき。本来、保険は「リスク」に備えるもの。保険金がもらえるからと病気になりたい人はいないはず。「長生きリスク」への備えと考えるべし。今後、「年金に頼らなくても生活できることは幸せなことだから、もらわなくてもいい」と発想を転換すべきだという議論がこれから活発になっていくはず
- マイナンバーで純資産への課税が始まる可能性はある(富裕層のもつ純資産に対し毎年課税をする「富裕税」の導入)
健康編:生きるということ
- テクノロジーの進化で病気を早期発見・早期治療! がんは治る病気になる
- バイオ3Dプリンターで臓器も作れるし、再生医療も進化する
- 2024年までには、あらゆるイルスに効く「万能ワクチン」も開発される可能性
- 遺伝医療(ゲノム医療)の分野での研究や技術も、驚くべき速度で進展。がんなどの遺伝する病気を防ぐことができる反面、遺伝子操作による差別や優勢思想が生まれやすくなる
- 明るい未来と暗い未来は表裏一体。医療技術が進めば進むほど、倫理的な問題が表面化する
- テクノロジーの発達により医療費が高額になる
- 明るい未来は健康あってこそ。また、 いくつになっても自分を磨くために、勉強は大事
最後に
今回は、『池上彰の未来予測 After 2040』 からの学びを紹介しました。
未来予測は人それぞれ違いますし、また、人によって得意な分野は異なります。この観点から見ると、池上彰さんは、一分野に特化することなく、世界を広く見る目をお持ちです。科学技術の進歩で、「昔の常識」は「今の常識」と異なっています。それらを点検するうえでも、本書は参考になるのではないでしょうか。
是非、本書を手に取り読んでみてください。
本書はKindle Unlimited対象。はじめてなら体験無料です。
合わせて以下も読んでみよう!月額料金制なので、読めば読むほどお得です。