- ハートフル小説で、心温かくなりたい方に超おすすめ!「心に傷を抱えたダメ男」と「時代遅れのポンコツロボット」の再起・再生の物語。
- 主人公のベンは、心に傷を抱え只今無職。前を向き歩み出そうとしない夫に愛想をつかす妻・エイミー。そこに、壊れかけのロボット・タングが現れてー
- 劇団四季のミュージカルとして舞台化されたほか、2022年、二宮和也さん主演映画『TANG タング』で映画化。笑いあり、感動あり。多くの人に読んでほしい小説
★★★★★
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『ロボット・イン・ザ・ガーデン』ってどんな本?
ハートフル小説で、心温かくなりたい方に超おすすめな小説に出会いました。
デボラ・インストールさんの小説『ロボット・イン・ザ・ガーデン』。
舞台は、家事や仕事に従事するアンドロイドが日々モデルチェンジする、近未来のイギリス。法廷弁護士としてバリバリ働く妻エイミーとは対照的に、仕事も家事もせず親から譲り受けた家で自堕落に過ごす34歳のベン。エイミーはそんな夫に苛立ち、夫婦はもはや崩壊寸前。
ある朝、ベンは自宅の庭で壊れかけのロボットのタングに出会う。「四角い胴体に四角い頭」という、あまりにもレトロな風体のタング。けれど巷に溢れるアンドロイドにはない「何か」をタングに感じたベンは、彼を直すために、作り主を探そうとアメリカに向かう。
「心に傷を抱えたダメ男」と「時代遅れのポンコツロボット」は、彼らは旅で何を見、何を感じるのかー
そして、その旅を通じて得たものとはー
ダメ男とロボットの再生・再起の物語
とにかく、ハートフルで、子どもの心を持ったタングがとてもかわいい!その場にいたら、きっと誰もが抱きしめたくなります。しかも、いい話で、読者はウルッとしてしまう。
劇団四季のミュージカルとして舞台化されたほか、2022年、二宮和也さん主演映画『TANG タング』で映画化もされています。多くの人に読んでほしい、素敵な作品です。
- ハートフルな小説が好きな方
- 小さなお子様がいる親御さん。子育てを終えた方。子どもがいない方。つまりすべての方にすすめたい
『ロボット・イン・ザ・ガーデン』:あらすじ
本作は、近未来が舞台ですが、ロボットSF小説ではありません。ハートフル小説であり、再生・再起の物語です。
あらすじ、タングのかわいらしさは上記Prime Videoの予告編で見ることができます(プラム会員は、追加料金なしで、作品が見放題です)。
無職のベン
タングは、旧式でレトロなロボットです。町を一緒に歩けば、「古っ!」と悪目立ちしてしまうようなレトロロボット。部隊の世界では、家事などのお手伝いアンドロイドなどが当たり前に人の生活をサポートしています。
タングは、正直、なんの手伝いもできません。言葉もカタコト。言葉を覚え中の幼児そのものであり、お世話をするどころか、世話が必要なロボットです。そんな、タングをエイミーは、私が欲しいのは「忙しい私をサポートしてくれる家事手伝いアンドロイドであって、おんぼろロボットじゃない。」と、タングを捨ててくるようベンに言い伝えます。
しかし、ベンはタングが気になってしまう。そもそも、そもそもベンは、親の遺産によって働かなくとも生きていけるだけの金がある「現在無職男」。そんな状況に愛想をつかしたエイミーは「仕事は単にお金を稼ぐだけのことじゃないのよ。ロボットにかまっている暇があんならあんた早く働きなさいよ」と言い放ちます。そして、それでも変わらず、タングと時間を過ごしているベンに愛想をつかしたエイミーは、離婚を切り出し、家を出て行ってしまうのです。
実は、エイミーはベンに、子供がほしいとサインを出していました。そして、ベンの再起を願っていました。しかし、ベンはエイミーの心を全く理解していなかったのです。
一歩を踏み出すベン
エイミーから離婚宣言をうけたベン。「なぜ、こんなことに…」と強烈な後悔が襲ってきます。ベン自身、心の傷を乗り越えて歩み始めなければならないことはわかっていました。
エイミーに「どうせできっこない」と言われ、さらに傷つくベン。しかし、この言葉に触発されるように、普通のロボットとは何かが違うロボット・ベンを助けてやろうと、製造元さえはっきりしないロボットを修理する旅に出ることを決めるのです。
タングとの旅
タングとの旅は、珍道中。修理ができる人を求め、開発メーカー、技術者などを渡り歩きます。次第に旅は、イギリス国内にとどまらず、アメリカ、東京と世界を巡ります。
タングとの旅は、まるで、幼児を連れて歩くようなものでした。はじめての空港、飛行機、場所など、目をキラキラさせてはしゃいだり、じっと見つめて観察したり…. ベンは言うことを聞かないベンに苛立ちを感じる一方で、「ベン、ベン!」と慕うタングに心を寄せていきます。さらに、旅を通じて、言葉を覚え、できることが増えていくタングを通じて、もし、エイミーとの間に子供がいたら、こんな感じだったのかなぁと思うようになるのです。
旅の途中、タングの状態は悪くなっていきます。時には、熱にやられて、放熱機構がうまく働かずに動けない状態に… そして、その間にも、タングからは大事な液体が漏れ出ていきます。
もう、タングの寿命がないことを認識するベン。ベンは「なんとしても、何としてもタング救わなきゃ」強固な気持ちで情報を探し求めるのです。
タングの開発者に出会うが
タングを作った科学者がパラオにいることを突きとめます。しかし、タングは喜びません。開発者の元に行くことを拒んでいるようです。しかし、ベンはタングと共にパラオに降り立ちます。そして、開発者の元を訪ね、開発者は無事タングを直してもらうことに成功しました。
しかし、タングは恐ろしい計画のもとに作られたロボットであることが判明…。ベンとタングは、開発者に閉じ込められてしまうのです。しかし、タングはかつて自分が一人で抜け出してきた方法を覚えていました。命からがら開発者の島を抜け出し、自宅に戻ります。
是非、このいきさつは、本作で読んでみてください。
なお、映画と原作は異なります。原作の方が、いろんな出来事があって、しかも、ラストも映画以上にハッピーエンドです。
『ロボット・イン・ザ・ガーデン』:感想
本作は、タングとの出会い&旅を通じて、一人のダメ男・ベンが成長していく、再起の物語です。
子供の成長が、大人をも成長させる
ベンは、ポンコツロボットに自分を重ね、そして、旅を通じて成長していくタングに多くの気づきを与えられられます。
大人は、子どもの成長に多くを教えられますが、それが、珍道中にギュッと詰まっています。幼児な無垢な目線で語るタングの言葉の中には、大人をドキッとする言葉もいろいろ登場します。
幼く弱く無垢な守るべき子供。そんな子供への愛が、大人をいかに大きく成長させるかー
そんなことを非常にうまく描く作品です。
子供の感性に大人も触れることの大切さ
レイチェル・カーソンの世界的名著『センス・オブ・ワンダー』をご存じでしょうか。
『子供に学ぶことより、感じる経験を与えてあげることの大切さ』、つまり、「センス・オブ・ワンダー=感性」のある経験をさせてあげることの大切さを説く、世界的名著です。子どもの目がキラキラするような経験をさせてあげることの大切さを説きます。
そんな経験に大人も寄り添ってあげると、大人もいろんなことを学ばされることを、とてもやさしい言葉で教えてくれます。
『ロボット・イン・ザ・ガーデン』では、タングがいろんなはじめてに喜ぶさまが色々描かれます。そして、ベンを見たり、また、タングが素直に感じて発した言葉で「はっ」とさせられます。そんな姿は、『センス・オブ・ワンダー』の教えを思い出させます。とてもいい本なので合わせて読んでみてほしいです。
最後に
今回は、デボラ・インストールさんの小説『ロボット・イン・ザ・ガーデン』のあらすじと感想を紹介しました。
本当にハートフルでいい作品です。是非、手に取って読んでいただきたい。
合わせて読みたいハートフル小説
合わせて読みたい本として、瀬尾まいこさんの『君が夏を走らせる』も紹介しておきます。
こちらの小説ではダメ少年(金髪不良少年)が、先輩の子どもの子守をするバイトを引き受けることに!ゆうことを聞かない幼児に苦戦しながらも、幼児と心を通わせ、いろんなことに気づき、成長する様が描かれます。
2人は、タングとベンに重なります。こちらも超ハートフル。読んでいる間中、顔が笑顔になれると同時に、感動します!