- 学びは、何気ない日々の中に転がっている。学ぶことは生きること。日々そこにある日常的な営み
- 学びにおいて最も重要なのは、「何を学ぶか」や「どこで学ぶか」ではなく、「どう学ぶか」
- 独学の推進力は「問い=疑問」から生まれる。つまり、自分の内側から湧き出る「疑問」を追求していくことで、探究心が刺激され、自発的な学びが促される
- 学びとは、経験をする前の自分と、その後の自分の「差分」。一般論ではなく、自分の経験に根付く泥臭いモノである。これを積み重ねることが大きな学びとなる
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『独学の地図』ってどんな本?
学びにおいて最も重要なのは、「何を学ぶか」や「どこで学ぶか」ではなく、「どう学ぶか」
私たちは、学ぶことが大事なことを知っています。そして、目まぐるしく変化する時代に取り残されないように、或いは、キャリアアップ・昇格のために「〇〇を学ばなきゃ」と考えます。
しかし、これらの問いよりもはるかに重要な問いがあります。それが、「どう学ぶか」。
学びは授業・講演・本などの中だけのものではありません。学びは、何気ない日々の中に転がっています。つまり、「学ぶことは生きること」そのものです。そもそも、日常の全ては「学びの場」です。与えられた勉強ではなく、どう学ぶかを知って、自分から学びたいと思えれば、毎日が学びであり、学ぶことを楽しめます。
著者の荒木博行(あらき ひろゆき)さんは、大学・ビジネススクールで学びの支援をしていますが、同じ1時間の講演でも、人によって「学びに圧倒的な差」があると言います。ある人は、学びからの発見を行動に移し人生を変えていく。一方で、学びからの気づきを問うても答えられない、記憶にすら残っていない残念な人もいます。
今回紹介の『独学の地図』では、息を吸うように学び、血肉化する方法が学べます。私は、出会えてよかったと思える、価値ある本となりました。
- 「学ぶこと」がとにかく嫌いな方。嫌だ、面倒だといった、マイナスの抵抗感をお持ちの方
- 自発的な学びではなく、外部の圧力で「勉強しなければならない」と思っている方
- 学ぶことに時間を割いていても、イマイチ自分のためになっていないと感じる方
どう学ぶか:独学の3つの階層
「どのように学ぶか」を知れば、あらゆる日常の経験が学びになります。
そもそも、日常の全ては「学びの場」であり、私たちが学ぶことはすべて「独学」です。たとえ、授業や講義であっても、学びに転換するのは「自分自身」だからです。
身の回りのものすべてを学びに転じていくための筋道が「独学の3つの階層」です。この3階層で「独学の地図」=オリジナルの知の体系を作っていきます。
第1階層は、すぐに実践できる独学の「行為」、第2階層はより長い時間軸で独学力を伸ばす独学の「能力」。そして、3階層目は、中長期的視点で整備していく独学の「土台」です。次元が上がるほど、高度になります。
ここで言う「土台」とは、自分が今まで何を学び、そしてこれから何を学んでいくかを整理するための「モノの見方」です。そのために、学びを棚卸する「ラーニングパレット」を用い、独学の地図を見定めていきます。
【第1階層】独学のための「行為」:具体的な学び方
独学のための「行為」のキーワードは、「疑問」「差分」「他社」・これらをトライアングルで回すことで独学が加速されます。
「疑問」から学び始める
独学の最初の出発点は何かわかりますか?それは、「これってどういうこと?」という「疑問」です。
実は、私たちは「疑問を持つ」のがさほど上手ではありません。知らない/わからないことだらけでも人は、疑問に感じません。例えば、夏休みの「自由研究」。嫌いな人が多いのは、自分で「疑問を立る」ことが苦手だからです。なぜなら、学校教育では「疑問・課題が与えられる」からです。故、「自発的な疑問」がたてられないのです。
独学には「疑問不在のお勉強モード」からの卒業が大事。疑問は意識しないと捕まえることはできません。しかし、目を凝らせば、知識の周囲に面白い疑問はたくさんあります。
「疑問がない」状況をいかに打破するかー。疑問を認識できれば、興味が刺激されて、知りたくなります。ビジネス現場で大事とされる「イシュー」(論じ、考えるべきテーマ)である必要はありません。自分の興味・関心を反映した「素朴な疑問」でいいのです。
疑問に気づくためのコツは、知り得た知識から、次の4つのゾーンに視線をずらしてみることです。
- 対象×過去:それはどうしてこうなったのか?
- 対象×未来:それはこれからどうなる?
- 自分×過去:自分はどうしていたか?
- 自分×未来:自分はどうなる?
または、今自分が直面する課題の中に、自分が知りたい疑問がないかを探す、ことです。「やらなくてはならないこと」の中に、不思議に感じることがないか探しましょう。
それでも何も疑問がわかない時は、とにかく手を動かし、体を動かす!そして振り返りしながら、疑問が自分の中で育つのを待つ!これ以外に「疑問不在」の状況を解決する方法はありません。
「差分」に学びを見出す
「学び」とは、誰かが設計してパッケージ化したものばかりではありません。「学び」の本質は「経験の前後の差分」 です。
私たちは、講演のアンケートで「何を学びましたか」との質問に、「刺激になりました!」とか「〇〇の知識」のような「それっぽい一般論」を書きがちです。これは「学んだつもり」にさせてしまうものです。
大事なのは、その人しか語れない「自分だけの具体論」。泥臭い気づきです。「学ぶ前の私は〇〇のように行動していたけど、これからは△△だ」など、学んだ前後で、何らかの変化が生じることです
これは講演に限った話ではありません。毎日同じような日が流れていても、全く同じ1日はありません。全ての経験は学びにできる!日々の中に「2ミリの学びを削り出す」ことを意識しましょう。
「他者」を通じて学ぶ
独学は自分で学ぶことですが、以下の通り、他者を利用すると加速します。
- アウトプットする(理解したから他者に語るのではなく、他者に語るからこそ理解する)
- 他者を利用して、「締切り」を作る(学びが先送りされない。取り掛かりが早くなる)
- 他者との意見交換などで、新たな気づきが生まれる
【弟2階層】独学のための「能力」:鍛えるべき5つの独学筋
独学力を高めるには、独学のための5つの筋力(独学筋)の反復トレーニングが大事です。身体の筋肉と同じで、独学筋を鍛えるのに「遅い」ということはありません。
独学筋 | 特徴 |
---|---|
自己批判筋 | 全ての行為において重要な力 浅くしか物事が考えられないのは、この能力が不足している 「自分の中に他者を飼う」ことで自己批判は高まる(自分にはない視点を持つ人の思考で考える) |
保留筋 | すぐに答えを着地させず、宙ぶらりんの状態に維持する力 寝かせることで、時を経て、想像もつかなかったタイミングでよい答えに巡り合うことがある 保留筋強化には、「複雑で意味不明なコンテンツに向き合うこと」が有効 例)古典文学や、抽象絵画、詩など |
抽象化筋 | 物事の本質部分を捉え、それ以外の部分は捨てる力 「一を聞いて十を知る」人は、この筋力に優れる 日ごろから、一見違うもの同士の裏側に隠れた本質的な共通項見つける訓練を行うことで強化される |
具体化筋 | 一見同じもの同士でもその違いを明確にする力 抽象化筋と具体化筋は、「バランスが大事」(抽象化筋ばかり鍛えてしまうと、世の中すべて同じように見えてしまう) |
表現筋 | 自分が学んだことをアウトプットする力 特に、「差分」型の学び、「他者」型の学びに多用する力 他者の優れた表現をストックすることで、力が伸びる |
【第3階層】独学のための「土台」:独学の地図づくり
独学の地図を作っていくにあたり、大切なのが「ラーニングパレット」です。
これまでの学びを自覚する「ラーニングパレット」
私たちの学びのパレットには、過去の学びを通じて、すでに多くの絵の具が揃っています。しかし、残念ながら多くの人は、現時点で何色の絵の具があるのか、どんな配色の傾向があるのか、多くの人は無自覚です。今まで自分が何を学んできたのかを構造的に整理し、自覚するのが、第3階層目です。
子の上で、自分が何を学んだのかを整理し、そして今後自分が何を学んでいくのかを定めていくことで「独学の地図」がつくられます。
なぜ、ラーニングパレットが大事か
なぜ、ラーニングパレットが大事かー。それは、キャリア像の賞味期限が日に日に短くなっているからです。
数年先のあるべきキャリア像から逆算して学ぶべき内容を考えキャリアアプローチは、ビジネスが安定的であり、組織が固定的であれば通用する考え方でした。しかし、世の中の変化が激しい現代では、キャリア像も変化するため追いつきません。そこで大事なのが「パレット」の概念です。
何を学んできたのか、構造的に整理し、自覚しておけば、変化が速い時代でも、臨機応変に対応できます。
学びたいことを探しに行く
ラーニングパレットでこれまでの学びを棚卸し、整理することで、キャリア形成のすり合わせも容易になり、次に学びたいことも見つけやすくなります。
なお、ここでも大事なのは、頭で考えた「学ぶべきこと(should)」「やらなければならないこと(must)」ではなく、心が求める「学びたいこと(want)」にフォーカスして、学びぶ方向性を見つけることです。
学びを必要性だけから考えてしまうと、必要最低限の枠内にとどまりがちです。必要性がなくなったとたんに用済みになってしまいます。
好奇心や偶然に身を任せる「学び」を実践しよう
「学ぶ必然性がないからこそ、より深く学べる」。一見矛盾する言葉ですが、これは大事な学びのルールです。
また、「〇という目的のために△を学んだけど、学びが直接的には役立たなかった。でも、長い目で見ると□で役だった」ということはよくないでしょうか。失敗からえる得る学びはこの代表です。学びには「意図と結果は常に異なる」という黄金律があります。
であるなら、「今、必要性がある」ということだけを、嫌々学んでもつまらない。その一方で、必要性が全くなく、単なる好奇心や好きといった感情が動くことを突き詰めていくことが、知らぬ間に実用的な学びに変わることがよくあります。
私の「ビジネス書から小説までジャンルを問わない雑多な読書」はまさにこれ。ここに学びの事前計画はありません。しかし、好奇心や偶然のおもむくまま、毎日読み続けることで、新たな気づきがあって、毎日が面白く、また、ふとした時、人生に役立っているなぁと感じることがあります。少なくとも、10年前の私と、今の私では、「同じものを見た時に受け取る情報」が違います。
最後に
今回は、今回は、荒木博行さんの『独学の地図』の要点を紹介しました。
本書では要点のみをまとめましたが、本書の魅力は、要点を腹落ちさせるために盛り込まれている「荒川さん自身の具体的な経験」や「例」です。これがあることで、なるほど🤔と深く納得できます。
是非、息を吸うように学び、血肉化する方法を本書を1冊を読むことで、身に着けてください。私は、「やらなきゃ」ではない、自分が学びたいから行う読書に自信が持てると同時に、それをより、加速して人生に活かすためにどうしたらいいかがわかて、大満足な1冊となりました。
本書の中で紹介されている良書も必見です。
ビジネスパーソンは、学びに「効果」「効率」を求めますが、「非効率」の中に、思わぬセレンディピティがあるものです。セレンディピティとは、「思いがけないものごとを発見する才能」のことを表す言葉であり、単純な幸運だけでなく、知識と観察、そして偶然によって思いがけない発見が生まれます。以下の本は、それを知るための超良書です。