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【書評/感想】葉桜の季節に君を想うということ(歌野晶午)完膚なきまでに騙された!大どんでん返しミステリー

【書評/要約】葉桜の季節に君を想うということ(歌野晶午)完膚なきまでに騙された!どんでん返しミステリー
葉桜の季節に君を想うということ」あらすじ・感想
  • 2004年に様々なミステリー関連の賞を総なめにしたミステリー衝撃のラスト大どんでん返しが凄すぎる
  • 私は完膚なきまでに騙された。お見事!最後の最後で、今までの世界がガラリと替わる面白さを知る
  • 読了後、二度読みでのトリック・ギミック・仕掛け探しが面白い。人ってこんなに簡単に、しかも、勝手に騙されるのね、と、大きな気づき!

★★★★★ Audible聴き放題対象本

目次

『葉桜の季節に君を想うということ』ってどんな本?

Audible聴き放題対象本

2004年に様々なミステリー関連の賞を総なめにした小説『葉桜の季節に君を想うということ』。作者は歌野晶午さん

  • このミステリーがすごい! 2004年 第1位
  • 本格ミステリベスト10 2004年 第1位
  • 第57回日本推理作家協会賞 受賞
  • 第4回本格ミステリ大賞 大賞受賞
  • 週刊文春 推理小説ベスト10 2003年度 第2位 

読書前にネタバレ禁物なミステリー。評価は賛否両論で、好き/嫌いに分かれます。

最初に私の感想を述べてしまうと、完全にやられた 自分に対して絶望感すら感じた「やられた感」でした。

恐ろしいまでの「大どんでん返し」に驚嘆し、速攻で本作を読み直し。いや、正しくは「どんでん返し」ではないのですが、物語の前提がことごとく覆ってしまうほど、完膚なきまでに「読者である私が騙された」ことに驚きました。

本作最大の特徴であり、魅力は「叙述トリック」

叙述トリックとは意図的に事実や描写を省き、読者を誤認させる手法です。物語のラストまで、タイトルの意味がわからないのですが、二度読みして、あぁ…. そういうことだったのね…. と納得するに至りました。

叙情トリック作品とわかって読んでも、結末は想像できません。私にとっては、大どんでん返しミステリー【1位】👑。ラストで、今までの見ていた世界がガラリと替わる面白さを味わせてもらって満足でした。

本記事では、『葉桜の季節に君を想うということ』のネタバレに注意しつつ、あらすじ・感想を紹介します。本作未読の方はくれぐれもご注意下さい。

こんな方におすすめ
  • 大どんでん返しミステリーで、「こりゃ、やられた感」を味わいたい方
  • 叙情ミステリーの面白さを味わってみたい方
  • 二度読みできる方

『葉桜の季節に君を想うということ』:あらすじ

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物語は過去・現在、複数の登場人物を行き来しながら進行します。ストーリーの進行とともに、時間と人間関係がつながっていき、最後に一気に伏線が回収されます。

最初は過去・現在のつながりがわかりにくくても、途中の読み飛ばしはNGです。

物語の舞台:運命を変える出会い

射精した後は動きたくない。相手の体に覆いかぶさったまま、押し寄せてくる眠気を素直に受け入れたい。

上記フレーズは本作の冒頭。これから始まるストーリーにどんなイメージを抱きますか?

主人公は成瀬将虎(なるせまさとら)。純粋な恋愛だけでなく、援交・風俗にもお世話になる女性好き。かつては探偵事務所で働き、いまは「何でもやってやろう屋」を自称して、いろいろな依頼を受けています。

俺の腹筋は六つに割れている。ベンチプレスは八十キロは軽い。・・スクワットにデッドリフトと、二時間近くは筋肉をいじめただろうか

ジムで体を鍛える一方、将虎は、「小説を読む時には、手元に必ずiPhoneを置く」という。

将虎は、タフでマッチョで色気や知性もある破天荒な男性なのかなぁと、昭和のテレビドラマのイケメン探偵のような主人公を想像しながら、ワクワク感が高まります。

さて、私の妄想はこのぐらいにして….

ある日、都立青山高校の後輩・芹澤清(あしざわきよし)からの頼みで、彼が密かに惚れているフィットネスクラブのメンバー・久高愛子(くだかあいこ)の祖父の不審死と、高額な布団や健康食品を売りつける悪徳商法組織・蓬莱倶楽部(ほうらいくらぶ)について調査をしてくれないかという話が舞い込みます。

詳細を聴こうと愛子を訪ねた日、将虎は偶然、駅のホームで飛び込み自殺を図った麻宮さくら(あさみやさくら)を助けます。

これら依頼と出会いがきっかけとなって、将虎の運命の歯車が回り始めるのです。

ちなみに、さくらの雰囲気は、身長は150cm足らず、体重は40kg程度か。髪は明るめの茶色。左胸と右腰に赤いハイビスカスがプリントされたノースリーブの白いワンピース。かわいい女性とのラブロマンスもあるのかなぁと、私の想像は膨らみます。

犯罪、過去と現在、そして、つながる人間関係

依頼主の愛子は親子三代聖心。育ちがよろしいようです。そんな愛子の祖父・久高隆一郎が交通事故で亡くなったのは2週間前。愛子は祖父は単なる交通事故ではなく、「轢き逃げ」だと言います。そして、そこには、高齢者をターゲットに悪徳商法を働く蓬莱倶楽部が関係しており、保険金目当てに祖父は殺されたというのです。

これは、あくまで、愛子の推測。証拠もない中、警察に相談するわけにもいかない。故に、元探偵の将虎に相談を持ち掛けたというのです。将虎は、探偵経験に自信があったわけではありませんが、依頼を引き受けます。

蓬莱倶楽部は多くの老人を騙していました。老人の中は高額商品の支払いができずに、借金減らしのために蓬莱倶楽部の犯罪に加担してしまう人もいたのです。古屋節子(ふるやせつこ)もそんな女性の一人でした。

老人を騙す悪徳商法、年金、借金、保険金ー。過去と現在ー。そして、つながる人間関係、愛ー

ラストでこれらがすべてが1つにつながります。

『葉桜の季節に君を想うということ』:感想

多読をするな!自分の頭で考えろ!

冒頭でも述べた通り、本作に対する評価は賛否両論でですが、私は最高傑作ミステリーの評価。そう思った理由をまとめてみます。

衝撃の結末

本作が2004年のミステリー関連の賞を総なめにした理由は、間違いなく「衝撃のラストです。

タイトルの意味がわかるのも最後の最後。そもそも、桜の描写もないし、ミステリーというより恋愛小説っぽいタイトルであることも妙で、読者はその意味を探りながら読みますが、途中では一向にわかりません。

とにかく、ラストで、登場人物の人間関係、犯罪、その他もろもろが、時空を超えてつながり、 (;゚Д゚)(◎_◎;) というびっくりな表情になります。

本作のラストに対し、「うわっ、マジで」と生理的な気持ち悪さを抱く人もいます。でも、その前に、「きょとん」とする方も多いはずです。ここで、本作を放り出したらもったいない!

洪作を面白く読むコツは、「とにかく最後まで読んで、しっかり騙されること」。そして、「もう一度読んで、なぜに騙されたか、その伏線を確認・納得する」ことです。

読者が勝手に誤認してしまう「妙」

「衝撃のラスト」に驚かされる理由は、作家・歌野晶午さんの「叙情テクニック」の高さにあります。

人は経験を通じて、言葉に「イメージ」を重ねて持っています。例えば「内向的な人は暗い」とか、「スポーツ好きには、アクティブでタフな人が多い」とか、言葉のイメージから勝手に人物の人柄を重ね合わせます。このような「人間の特性」を、本作はとてもうまく組み入れて、ストーリーを展開しています。

だから騙される。そして、二度読みしてはじめて、「私、最初から騙されてるんじゃん!」と気づくのです。

しかも、叙情トリックは人物イメージに対してだけではありません。実は別人と思っていた人物が同一人物であるなど、幾重にも重なる仕掛けで騙されるのです。

最初から読み直すと、どれだけ、読者を欺く「トリック」「ギミック」がてんこ盛りだったかに驚かされます。 一方で、ところどころ、最後のラストに直接つながる表現も仕込まれているのが憎い。でも、そんな仕込み、気づくの無理ですよ…

歌野晶午さんの筆力に完敗!以後と

二度読みして、歌野晶午さんの筆力に完敗!ここまで騙されるとは、見事というしかありません。

普通、騙されるといやな気分になるものですが、見事なまでに騙されると、逆に気分がいいですね。二度読みしながら、仕掛けを見つけることが、逆に楽しくなりました。

最後に

今回は、歌野晶午さんの『葉桜の季節に君を想うということ』のあらすじ・感想を紹介しました。

本作を二度読みしてわかったのは、人は、簡単に騙される/騙せるということ。ちょっと怖い事実ではありますが、それを実体験して知っておく価値もあるかと。「私は絶対に騙されない」という間違った思いは払しょくできるはずです。

とにかく、面白い作品なので、読んでみてください。

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