- 生活保護をめぐる“餓死殺人”から始まる社会派ミステリー
舞台は震災から9年後の仙台。福祉保健事務所の元幹部が餓死させられるという異様な連続殺人が起こる。捜査の中で浮かび上がるのは、生活保護を求めながらも拒まれ続けた人々の過酷な悲劇だった。 - 貧困が生む犯罪の連鎖
制度に縛られる行政、忖度に従う現場、助けを求めても届かない声。作中には”単純”な悪役が存在しない。だからこそ、護られるべき人が切り捨てられた現実が、読者の心に重くのしかかる。 - 貧困は過去の話ではない
円安・物価高・非正規雇用が広がる今の日本に、この物語は直結している。「貧困は何を生むのか」を静かに、しかし鋭く問いかける。
★★★★★ Kindle Unlimited読み放題対象本 Audible聴き放題対象本
『護られなかった者たちへ』ってどんな本?
【Kindle Unlimited】30日体験無料
【Audible】 30日間無料体験
【Music Unlimited】30日間体験無料 → 音楽に加え、月1冊Audible読み放題
※3つともいつでも解約可能
貧乏ってのはありとあらゆる犯罪を生むんだ―。
軽い気持ちで読む本ではありません。
この一文に、すべてが詰まっています。
中山七里『護られなかった者たちへ』は、“生活保護”と“貧困”を真正面から描いた社会派ミステリーです。
護られてしかるべき人が護られず、切り捨てられてたことから始まる悲劇の物語。
読んでいる間、胸が締めつけられる。
そして、どうしようもなく涙がこぼれる。
「これはフィクションだ」と言い切れない現実が、ページの中にあります。
映画化もされていますが、映画だけではもったいない作品。ぜひ、原作小説を読んでほしい一冊です。
護られなかった者たちへ:あらすじ
舞台は、東日本大震災から9年後の仙台。
全身を縛られ、餓死させられるという異様な連続殺人事件が起こります。
最初の被害者は、福祉保健事務所の元課長。
次に、元所長。
どちらも「人格者」と評され、恨みを買うような人物には見えません。
事件を追う刑事・笘篠が辿り着いたのは、生活保護をめぐる“水際作戦”と、申請を拒まれ続けた人々の現実でした。
そして浮かび上がる一人の男。
彼が、罪を犯してまで“護ろうとしたもの”とは何だったのか——。
護られなかった者たちへ:主な登場人物
✅ 警察関係者
笘篠誠一郎:捜査一課刑事。妻と子を東日本大震災で亡くす
蓮田 :若手の捜査一課刑事。笘篠と共に三雲の餓死事件を捜査
✅ 容疑者関連
利根勝久 :事件容疑者。過去に福祉保健事務所の三雲を暴行して服役
遠島けい :過去に利根が慕っていた老婆。生活保護が認められず、餓死
カンちゃん:利根と同じく、遠島けいを慕う
✅ 福祉保健事務所関係者
三雲忠勝 :一人目の被害者。福祉事務所 第一課課長。周囲から人格者と評価
城之内猛 :二人目の被害者。元事務所所長
円山菅生 :ケースワーカー。真面目に勤務
上崎岳大 :元所長。「宮城セレブリティ倶楽部」に所属
護られなかった者たちへ:感想

原作小説に描かれる貧困の実態は、映画以上に過酷です。
私はページをめくりながら、嗚咽が止まりませんでした。人前では読めないほど、泣きました。
この物語が、ここまで苦しい理由
本作が残酷なのは、悪役が単純ではないからです。
- 制度に縛られる行政
- 忖度に従う現場
- 助けを求めても届かない声
- そして、静かに餓死していく老女
誰か一人を責めれば済む話ではない。だからこそ、読み手の心に深く刺さります。
特に原作小説は、
遠島けいが餓死に至るまでの描写が、あまりにも壮絶。
映画では描ききれなかった“貧困の時間”が、容赦なく突きつけられます。
私はここで、ページをめくれなくなるほど、ぐずぐずに涙しました。
映画を観た人ほど、原作を読んでほしい
映画版も評価は高いですが、正直に言います。
泣けるのは、圧倒的に原作です。原作と映画には大きく異なる点もあります。
- カンちゃんの人物像
- けいさんの自宅に残されていた「遺言ともいえるメッセージ」
- 不正が暴かれる過程
- カンちゃんが最後に発したメッセージと、そのメッセージが生活保護行政・世間に与えた影響
- そして、ラストの余韻
どれも、原作の方が深く、重く、救いがありません。
それでも読む価値があるのは、この物語が「今の日本」に直結しているからです。
「護られなかった者たち」は、過去の話じゃない
円安、物価高、非正規雇用。
今の日本は、確実に格差が拡大し、先進国間では相対的な「貧乏化」が進んでいます。
この物語に出てくる人たちは、特別に怠けていたわけではありません。
ただ、護られるべきときに、護られなかった。それだけです。
諸悪の根源は「貧困」。
貧困は多くの不幸・犯罪を生み出します。
連続殺人事件の発端も、疑似家族ながら心を通わせていた遠島けいの餓死でした。
利根、カンちゃん、けいおばあちゃんの3人の間には、確かに「守り合おうとするつながり」がありました。
しかし時間の経過は、それぞれの生活を変えていきます。人は、いつまでも一緒にはいられません。
だからこそ必要な、セーフティネット。
しかしそれは、縦割り行政や経費節減、忖度という“行政の闇”によって機能しませんでした。
確かに、貧しい人すべてが犯罪者になるわけではありません。
それでも、不幸は連鎖し、さらなる不幸を呼びます。放置されていい問題ではありません。
それぞれが、大事なものを護ろうとした ※ネタバレ含む
疑似家族の3人は、それぞれが相手を護ろうとしました。
円山は護れなかった遠島けいのために己を賭して復讐を実行した。
利根は、弟分である円山を護るために、8年間の刑務所生活を選んだ。
遠島けいは、飢えで薄れていく意識の中、最後まで“息子たち”を護ろうとした。
皆、自分の護るべきものを、必死に護ろうとしたのです。
そして今回の事件で、利根はカンちゃんを……。
事件の真相は、さらに先にあります。ここからは、ぜひ小説で確かめてください。
貧困と犯罪
小説の中には、生活保護を求める困窮者と職員のやり取りが数多く描かれます。
読みながら思い出したのが、宮口幸治さんの著書『ケーキの切れない非行少年たち』です。
宮口さんは、非行少年たちの一部も、幼少期に「護られなかった者たち」であると指摘します。
護られなかった結果、人生にわたって貧困と犯罪から抜け出せなかった人たちが、現実に存在します。
本書には、次のような指摘もあります。
大雑把な計算で、一人の受刑者を納税者に変えられれば、約400万円の経済効果。
単純計算で年間2240億円分、国力がUP。
被害額も合わせれば、年間の犯罪者による損害額は年間5000億円がなくなる。
改めて、貧困とは非常に根深い問題だと痛感させられます。
最後に
今回は、中山七里さんの小説『護られなかった者たちへ』を紹介しました。
重い。苦しい。でも、目を背けてはいけない物語。
『護られなかった者たちへ』は、社会派ミステリーであり、現代日本への問いです。
「貧困は、何を生むのか」その答えを、あなた自身の目で確かめてください。
中山七里さんの本
中山七里さんの小説の大きな魅力は、時代を映す社会問題を真正面から描くことにあります。
貧困、司法、政治、死刑制度、安楽死――現実社会が抱える重たいテーマに、巧みなミステリーを重ねる作風は、「社会派ミステリー」が好きな読者にはたまらないものです。
代表作を挙げるだけでも、その守備範囲の広さがわかります。
| 本 | タイトル | テーマ |
|---|---|---|
![]() | 護られなかった者たちへ | 貧困・社会福祉 |
![]() | 境界線 | 災害と貧困・犯罪 |
![]() | 総理にされた男 13%還元中 | 政治・内閣 |
![]() | テミスの剣 50%還元中 | 司法制度・冤罪 |
![]() | メネシスの使者 50%還元中 | 死刑制度・殺人犯 |
![]() | セイレーンの懺悔 | 報道と犯罪事件 |
![]() | 特殊清掃人 10%オフ中 | 孤独死 |
![]() | ドクター・デスの遺産 | 安楽死 |
いずれも、ミステリーとしての面白さをしっかり保ちながら、読み終えたあとに「この問題は現実ではどうなっているのか?」と考えさせられる作品ばかりです。
物語をきっかけにテーマを調べてみると、自然と知識が深まり、社会を見る目も変わっていきます。
また、映画やドラマに映像化された作品が多いのも中山七里作品の特徴です。
映像作品ではセンセーショナルな場面が印象に残りがちですが、原作小説では社会の闇や人の痛みが、より静かに、より深く描かれます。
だからこそ、中山七里作品は「観る」よりも「読む」ことで真価を発揮する。
エンタメとして楽しみながら、現代社会の問題にも向き合える――そんな読書体験を与えてくれます。















